道徳「イノシシの命を考える」(小学校3年生で実施)

藤原 友晴

              

1.単元名 野生動物の命を考えよう

 

2.目標  生命の尊さを感じ取り、生命あるものを大切にする。(3- (2)

 

3.指導にあたって

●なぜ、この単元か

本単元実施前に、国語科教材「動物とくらす」で動物についての説明文を学習した。その学習を通して「動物をもっと大切にしていきたい」という思いをもった。ただ、実態として身近な人間の生活と動物の生活とをむすびつけ、因果関係を考えるところまではいっていない。

そこで、せっかく芽生えた「動物をもっと大切にしていきたい」という思いを、ひろく一般的な動物にまでひろげ、具体的な行動レベルにまで高めていくために、野生の動物の普段の生活や現代の状況について、深く考えさせたい。その際、抽象的思考が苦手な3年生の思考段階を考慮して、「動物とくらす」よりももっと身近で想像しやすい具体的な動物を介したいと考えた。

 

   なぜ、イノシシか

題材としての利点

1)日頃から目にして記憶に残っているものであれば、新事実を示したときに少なからず興味を覚える

2)半わかりの状態を子ども自身に認識させて真相追究への意欲を引き出しやすい

 

校区で間近に見かける「六甲のイノシシ」をとりあげる。校区を含む六甲山山麓は全国でも珍しく、野生イノシシが人の居住区内でよく見られる地域である。子どもたちも登校中に、芦屋川に親子のイノシシが下りて来ているのを見つけたりする。非常に生活圏に身近な野生動物として「イノシシ」の存在がある。しかしその実態や関わり方などは知らず、まるで見世物を見るようにわあわあ騒いで終わり、というレベルにとどまっている。

イノシシが人里に出てくるのは山でえさが不足しているからであり、人間がえさを持っていることを知っているからだ。「ああ、あのとき会ったイノシシはそういう事情で来ていたのだ」と納得できれば、野生動物の命について、本気で考える契機になる。

 

●ねらいとてだて

野生動物の命に関して本気で考える時間にする。そのため、単刀直入に「動物の生死」についての具体的な資料を提示する一方、意見が分かれそうな具体的な事実(イノシシによる被害がどれだけあって、そのためにイノシシを殺した)を語ることで、子どもたちが自然と「それはちょっとおかしいのではないかな」「理由はわかるけれど、動物の命はそんなに軽いものなのかな」といった意見をもち、自ら冷静に考えてみようとすることをねらう。その際、子どもにありがちな、あやふやな論理や表面的な感傷をなるべく出させないために、深く事実に立脚した説得力のある教師の働きかけを心がける。

 

4.全体計画 (本時 1/2)

 

学習活動とねらう力

教師の支援

評価規準[評価方法]

1:

様々な観点から人間と動物の比較を行い、感想を交流する。

人間と動物の両方によさがあることに気づく

 

イノシシによる被害について知り、被害対策をどうするか考える。

イノシシと共存する方法についての思考・判断

 

 

 

・人間が動物より優れているという児童意見を様々なデータでゆさぶる。

 

 

・3年生にわかりやすい資料文を自作し、ゆっくりと意味をおさえながら読み聞かせる。

・被害の要点を板書し、児童意見を、見た目でわかるように整理する。

 

人間と動物の両方によさがあることに気づいたか。

[授業感想文]

 

 

・資料文をふまえた意見を考えているか。

[発表][ワークシート]

 

5.本時の目標

イノシシ被害の現実を知り、イノシシと共存する方法について考える。


 

6.展開 (下線部は使用した資料や教材)

学 習 活 動

指導上の留意点

1.捕獲されたイノシシの写真を見て、なぜ捕獲されたかを想像し、発表する。

 

2.イノシシの被害についての資料を読み、捕獲された理由についてたしかめる。

 

3.提示事実についての考えをワークシートに書き、発表する。

 

4.発表での中心的な論点について、賛成・反対の立場を明らかにしてワークシートに考えを書き、話し合う。

 

 

5.本時の授業の感想を書く。

 

捕獲された後、殺されることもあることを話し、動物の命を奪ったという事実をおさえる。

 

 

 

 

 

書く作業中に机間巡視をして、意見の対立をチェックする。

 

意見を整理し、黒板に論点をまとめる。「人間が生きていくためには動物を殺しても仕方ない」という意見に賛成か反対か、意見を投げ返す形でもう一度考えさせる。

 
●板書内容 (一部分消してしまいましたが・・・)

板書はもうちょっと勉強しないといけません。構造のよくわかるレイアウトが課題です。

7.成果

普段学習意欲の乏しい子もワークシートに多くの意見を書いていた。

1)児童それぞれが深く考えていたこと

2)それぞれの意見の多様性が出ていたこと
上記2点は今までの授業の中でも一番であった。


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