「となりの山田くん」、興行的にはふるわなかったようですね。
私はあれ、すきなんですけど。
というわけで、「となりの山田くん」を観て
思ったことをつれづれなるままに書きます。
 
「となりの山田くん」基本情報
・1999年日本映画 監督:高畑勲 音楽:久石譲(主題歌:矢野顕子「ひとりぼっちはやめた」)
朝日新聞朝刊に連載されていた4コマ漫画の映画化。
母・まつ子の悩みは晩ご飯の献立ぐらい、父・たかしの日曜日はパチンコかごろ寝、
祖母・しげの口の悪さは相当なもの、長男・のぼるは何をしてもパッとしない、
長女・のの子はかわいいけど大食い、
そしてほえない、尻尾も振らない、お手もしないけどかみつく犬のポチ・・・・
と日本にありがちな山田家。
彼らは大きな目標に向かって努力したり、私はまだ本当の自分じゃないと自分探しを始めたりしない。
自由でそのうちなんとかなるといい加減に毎日を生きている。
日本人の大半がかつてそうであり、実は今もそうであるはずの「庶民」を描いた作品。 
キャッチコピーは「家内安全は、世界の願い」 

 

さる方のご感想
>なんか、話がブツブツ切れてて、個人的には、めちゃ気になりましたけど
>途中の俳句?でごまかしてますよね、あれは。
 
俳句
はただの区切りですね。
うん、シナリオの最後のまとめだからってね、
別にわかりやすく「よかった」とか「めでたし」とか言わなくても、
イメージを別方向からつかみ取るような感じで、全く違った表現で提示するのも手だなあと思います。
そうすることで、同じものを多面的に感じさせることができるんじゃないかな。
たとえばドリフの「ダメだこりゃ〜」「次いってみよう」にしても、この映画のような俳句の役割をしていたのだと
思うのです。
私のセンスではこの程度の例しか思い浮かびませんが・・・。
 
話が切れてると感じるのは、4コマ漫画的な体裁になれていないだけで、
テンポ感、間の取り方、話の展開は悪くないと思います。
 
テンポよく進むところと、長く待たせるところ
(「あれ、この人はこの後どういうアクションをするんだろう」と観客に思わせたままひきずるところ)
がうまく配分されていて、退屈させない。
やはりエンターテインメントはお客を退屈させたらいけませんね。
また、そのことがキャラクターへの興味を強めることにもつながってたと思います。
 
しかも笑えるとこでは笑えるから、リラックスして見れる。
私は見ているうちにすっかり構えがとれちゃいました。
メモ用意して注意深く観てたんですが、
半分過ぎたあたりから「深く考えずに素直に楽しもう」という気に変わってましたべ。
そういう精神状態になれたのが、実は一番楽しかったのかもしれません。
 
キャラクターへの興味をかき立てるという点では、
やはり一つ一つの題材が非常に頷けるものであることが大きいと思います。
「ああ、こういうことあるある」「私にもこんなときがあった」と思わせることができている。
演出はただその程度を引き上げているだけで、要はシナリオですね。
話の持って行き方に無理がない。
オチがうまくついているのっていうのは、
つまり予測はしてなかったけどいわれてみれば確かに納得できてしまう、ということでしょうね。
 
4コマといっても、予測しなかったような方向に話が転ぶのばかりではなく、
同じようなことを畳みかけるようにやって、「そんなもんだろう」という常識的程度を飛び越す、
というのも多かったです。
どちらにしろ、やるなら思い切りやって、中途半端にならないようにしないと
退屈の元ですね。
 
思っていたよりも、伝えたいことがはっきり伝わってくる映画でした。
やっぱり作り手のメッセージみたいなものを
成果物に込めないとな〜と思いましたよ。
最大の反省であり、最大の収穫ですね。
  
「本当に私はあなたが好きなんです」という素直な気持ちは
受け手を動かしますよ。
非常にシンプルな形でね。
だからそういう自分の気持ちに正直でなければいけない、
そういうところで自信を持てないと、決していい作品にはなり得ないと思います。
やはり。
 
結局は「逃げちゃダメだ」ってことですか。
自分がどんどんダメになっていった理由がわかりましたよ。
 
ああ、それから、
音がね、四方八方いろんなところから聞こえてきておもしろかったです。
ああいう体験は映画館でないとできないですね。
矢野顕子のテーマ曲もいい。
 
音楽は雰囲気を直接的に盛り上げるから、非常に重要な存在ですね。
その役割がはっきりしているのがよかった。
「月光仮面」も変にリアレンジせずに、オリジナルを最高の音質で聞かせてくれたのがいい。
何が効果的なのかをわかってて、そのとおりにつくってるという気がする。
 
 
2時間くらいの映画でしたけど、あっけなく終わっちゃって、
1時間くらいしか観てないような気がしました。
 
帰りにパンフ買おうかと思いましたけど、レイトショーだったから
店員がいなくなってましたね。残念。
 
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