感情移入の仕掛け〜ドラクエのせりふ〜

2003/01/19

ドラクエのせりふはよくできている。

初めてドラクエをプレイしたとき、
感銘を受けたのは、セリフの内容もそうだが、
セリフのシステムである。


「主人公はしゃべらない」
ということだ。


プレイヤーは「話す」というコマンドを選択するだけで、
相手が勝手に話し出す。


プレイヤー自身がどういう思いでいるかは、現実にはわからないので
不用意に代弁しない。
プレイヤーが考えた言葉でないのに、
ゲームのシナリオに沿って勝手に主人公が話をするのは
ゲームプレイヤーとしての自己独立性を妨げる。

これは簡単なことのように見えるが、
現実のコミュニケーションは「A」といえば「B」というように、
応答関係で成り立っているので、
「B」という相手の返答しか表示しないという考え方は
なかなか革命的なものであったと思う。


シナリオのレールに乗せるために、
「B」という返答は変えられないのであるが、
「A」という主人公のセリフはプレイヤーの頭の中に補って想像される
ために、用意されたシナリオに沿っているにもかかわらず、
自分自身で冒険している気分が高まる。


これは、たとえば授業でもそうで、
教師が「こう思ったのですね。」などと代弁すると、
「そうではない」と頭の中で思った子をおいていくことになる。
(一斉授業では話を前に進めるために代弁せざるを得ない状況があるが、
 そのやり方は変えていかなければならない。)


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